タイでのクラウド選び – AWS、Azure、GCPの比較ガイド ~日系企業のための選定ポイント(2025年1月版)~

タイでのクラウド選び – AWS、Azure、GCPの比較ガイド ~日系企業のための選定ポイント(2025年1月版)~

タイでデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する日系企業にとって、パブリッククラウドの選定は非常に重要な経営判断の一つです。

タイのクラウド市場は急速に成長しています。主要なグローバルプレイヤーから中国系プロバイダーまで、様々な選択肢があります。多くの企業が以下のような課題を抱えているのではないでしょうか。

– どのクラウドサービスが自社に最適なのか
– タイ特有の規制や市場特性にどう対応すべきか
– 本社のIT戦略との整合性をどう取るべきか

この記事は以下の方に向けて書きました。
– タイの日系企業の経営者
– 日系企業のITマネージャー
– クラウド・インフラの担当者

最新の重要な動きとして、AWSが2025年1月8日にタイでリージョンを開設しました。これはタイの日系企業のクラウド選びに大きな影響を与えます。

本記事では、主要なパブリッククラウドサービスの特徴や選定のポイントを詳しく解説します。このガイドを通じて、御社のビジネス要件に合致したクラウドサービスを見つける手助けとなれば幸いです。

タイのクラウド市場の現状と特徴

タイのクラウド市場は年間20%以上の成長を続けています。この成長にはいくつかの要因があります。

政策面での追い風

– Thailand 4.0政策が後押しをしています
– Eastern Economic Corridor (EEC)でデジタルインフラの整備が進んでいます
– 政府機関や大手企業がクラウド採用を積極的に進めています

規制環境の特徴

– PDPAへの対応が必須です
– 金融機関向けのクラウド利用ガイドラインがあります
– 政府機関にはデータの国内保存要件があります

インフラ環境と市場ニーズの特徴

– バンコク首都圏に一極集中し、主要なデータセンターもこの地域にあります
– シンガポールとの回線接続が重要です
– コスト削減の要求が強いです

日系企業特有の課題

– 本社のIT戦略との整合性が必要です
– 日本とタイの両方の規制に対応する必要があります
– 日本・タイ・英語でのコミュニケーションが発生します

これらの特徴を理解することは、クラウドサービスを選ぶ上で重要です。特に日系企業の場合、本社との連携を考慮した選定が必要となります。

中国系クラウドサービス採用における機会とリスク

タイのクラウド市場では、AlibabaCloud、TensentCloud、HuaweiCloudなどの中国系クラウドサービスが急速にシェアを拡大しています。これらのサービスは米国系クラウドと比べて20-30%安価というコストメリットがありますが、重大なリスクも存在します。

政治的リスク

– 米中対立の影響を受ける可能性があります
– 中国政府の政策変更による突発的な規制リスクがあります
– 国際情勢の変化でサービス継続が不安定になる可能性があります

データに関するリスク

– 中国政府によるデータアクセスの可能性があります
– データの管理場所が不透明な場合があります
– 国際的な緊張時にデータが人質になるリスクがあります

日系企業が特に注意すべき点

– 本社のコンプライアンス方針との整合性を確認する必要があります
– 日中関係の変化がサービス利用に影響を与える可能性があります
– グローバル展開時の制約となる可能性があります

特にグローバルに事業を展開している企業や、金融機関、重要インフラ事業者、また機密性の高いデータを扱う企業は、慎重な検討が必要です。政治的な要因でデータアクセスが制限される可能性は、事業継続の観点から重大なリスクとなります。

マルチクラウド戦略の現実と課題

近年、複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」という考え方が注目を集めています。しかし、その採用には慎重な検討が必要です。

マルチクラウドとは、複数のクラウドプロバイダーのサービスを同時に利用する形態です。一見、リスク分散や各社の強みを活かせるように思えますが、実際には多くの課題があります。

マルチクラウドの課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
[マルチクラウドの課題と対策]

むしろ、以下のような避けられない状況での選択肢として考えるべきです。
– 企業買収による既存システムの継承
– 特定の業務システムが特定のクラウドでしか動作しない場合
– 規制要件による強制的な分散化

次のセクションでは、タイでのクラウド選定において、より現実的なアプローチを説明します。

クラウドプロバイダーの選定方針

前述の中国系クラウドサービスのリスクとマルチクラウドの課題を踏まえ、タイでのクラウド選定は以下の方針で進めることを推奨します。

選定対象の絞り込み

タイでの安定的なビジネス展開のため、以下の3社に絞って検討を行います。
– AWS
– Microsoft Azure
– Google Cloud Platform

絞り込みの理由

地政学的リスクの回避

– データガバナンスが透明です
– 国際情勢の変化に対して安定しています
– 長期的な事業継続性が期待できます

グローバル標準への準拠

– 国際的な規制基準に適合しています
– 世界中で使われている技術基盤です
– 本社のIT戦略との整合性が取りやすいです

実績とエコシステム

– 豊富な導入実績があります
– パートナー企業が充実しています
– 技術者の確保がしやすいです

次のセクションでは、この3社の詳細な比較を行います。以下の観点から評価します。
– タイ国内のインフラ整備状況
– サービスの特徴と強み
– 価格と費用対効果
– サポート体制
– 導入実績

主要クラウドプロバイダーの詳細比較

タイでのクラウドサービス選定において、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureの3社を詳しく比較します。

Amazon Web Services (AWS)

タイでのサービス状況
– 2025年1月8日にタイランドリージョンを開設しました
– タイ国内でデータを保存できます
– PDPAへの対応が容易になりました

主な特徴
– シンガポールリージョンと比べて約10%のコスト削減が可能です
– タイ国内からのアクセスが高速です
– 最も豊富なサービスラインナップを提供しています

Google Cloud Platform (GCP)

タイでのサービス状況
– 360億バーツの投資計画を発表しています
– バンコクとチョンブリーでの2拠点展開を予定しています
– 具体的な開設時期は未定です

主な特徴
– AIとデータ分析基盤が強みです
– 環境に配慮したインフラを提供します
– 現在はシンガポールリージョンが主力です

Microsoft Azure

タイでのサービス状況
– バンコクでのリージョン開設を計画中です
– 具体的な開設時期は未定です
– 現在はシンガポールリージョンが主力です

主な特徴
– Office 365との連携が強みです
– エンタープライズ向けの実績が豊富です
– Windows環境との親和性が高いです

推奨:AWSを軸とした検討

以下の理由から、タイでのクラウド展開ではAWSを軸とした検討を推奨します。

確実性の高い展開
– すでにタイランドリージョンが利用可能です
– 明確なロードマップがあります
– 政府からの支持を得ています

実務面での優位性
– 技術者の確保がしやすいです
– グローバルにおける導入実績が豊富で、参考情報が多いです

ただし、以下の場合は他社の選択も検討してください。
– AIやデータ分析が特に重要な場合はGoogle Cloud
– Microsoft製品との統合が必須の場合はAzure

クラウド導入におけるパートナー選定の重要性

クラウドプロバイダーの選定と同様に重要なのが、導入・運用を支援するパートナー企業の選択です。特にタイでは、適切なパートナー選びが成功の鍵となります。

パートナー企業に求められる要件

– 日本語とタイ語でのコミュニケーションが可能です
– タイの法制度や商習慣を理解しています
– クラウドプロバイダーの認定資格を持つエンジニアが在籍しています
– タイでの豊富な導入実績
– 割引でのAWS利用サービス

AWSパートナー企業について

AWSパートナー企業の詳細な比較と選定のポイントは、[こちらの記事]で詳しく解説しています。

タイ・バンコクでおすすめのAWSパートナー企業を紹介(2025年1月版)

パートナー選定のポイント

パートナー選定では、技術力、コミュニケーション力、サポート体制の3つの観点から評価することが重要です。特に日系企業の場合、日本語でのコミュニケーション能力と、本社・現地法人間の調整能力は重視すべきポイントとなります。

適切なパートナーと共に進めることで、スムーズなクラウド移行が実現でき、安定した運用体制を構築できます。さらに、将来的なシステム拡張にも柔軟に対応することが可能となります。

まとめ

ここまで、タイでのクラウド市場の動向や、主要なクラウドプロバイダーの特徴、選定のポイントについてご紹介してきました。

タイでのクラウド活用においては、信頼性の高いプロバイダーの選定と、タイ特有の規制や市場特性への対応が重要です。2025年1月のAWSタイランドリージョン開設により、タイのクラウド市場は新たな段階に入りました。

特に日系企業の場合は、本社のIT戦略との整合性を保ちながら、タイでのビジネス要件に応える必要があります。そのためには、技術力が高く、多言語対応が可能で、充実したサポート体制を持つパートナー企業との協業が不可欠です。

この記事が、タイでのクラウド活用における最適なプロバイダーとパートナーの選定の一助となれば幸いです。

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