近年、複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」という考え方が注目を集めていますが、その採用には慎重な検討が必要です。
マルチクラウドとは
マルチクラウドとは、複数のクラウドプロバイダーのサービスを同時に利用する形態を指します。一見、リスク分散や各社の強みを活かせるように思えますが、実際には多くの課題があります。
マルチクラウド採用による負担増
マルチクラウドを選択することで以下のような問題を引き起こすことがあります。
1. コストの増加
・各プロバイダーごとの最低利用料金の発生
・複数環境の運用管理コスト
・データ転送料金の増加
・人材育成・確保のコスト増
2. 技術的な課題
・各プロバイダー固有の技術スタックの学習必要性
・異なるセキュリティモデルへの対応
・運用管理の複雑化
・監視・モニタリングの重複
3. セキュリティとガバナンスの課題
・各プロバイダーごとの異なるセキュリティポリシー
・アクセス管理の複雑化
・コンプライアンス対応の負担増
・インシデント対応の複雑化
エコシステムの分断
各クラウドプロバイダーは、独自のエコシステムを構築しており、そのプラットフォーム内での最適化を前提としています。マルチクラウドはこれらのメリットを十分に活用できない可能性があります:
・プロバイダー固有のマネージドサービスが活用しづらい
・統合されたソリューションのメリットを享受できない
・パートナーエコシステムの分断
マルチクラウドを選択する現実的なケース
マルチクラウドは積極的に目指すべき姿ではなく、以下のような避けられない状況での選択肢として考えるべきです:
・企業買収による既存システムの継承
・特定の業務システムが特定のクラウドでしか動作しない場合
・規制要件による強制的な分散化
・取引先からの要請
まとめ
ここまで、マルチクラウドの課題と、単一クラウドプロバイダーを選択することのメリットについて解説してきました。
単一クラウドの活用は、運用コストの最適化、技術的な一貫性の維持、セキュリティリスクの最小化など、多くの点で優位性があることがわかります。
また、特定のクラウドプロバイダーのエコシステムを深く活用できる点も、事業展開における効率性を大きく向上させます。
マルチクラウドから単一クラウドへの方針転換は、単なるインフラ構成の変更ではなく、クラウド戦略における重要な判断となっています。
この記事が、クラウド基盤を検討される企業の皆様にとって、最適なクラウド選択の一助となれば幸いです。