タイで事業を展開する日系企業のみなさん。クラウドの選択に悩んでいませんか?
これまでタイの企業には、True IDCやCAT Cloudなどのローカルクラウドと、AWS、Azure、GCPなどのグローバルクラウドという選択肢がありました。それぞれに長所と短所があります。
本記事では以下の内容を解説します。
・タイのクラウド市場の最新状況
・コストと性能の具体的な比較
・業種別の選択ポイント
・実際の導入事例
この記事を読むことで、あなたの会社に最適なクラウドを選ぶためのヒントが得られます。特に、予算管理やシステム構築の責任者の方に役立つ情報をお届けします。
タイのクラウド市場の現状
タイのクラウド市場は、2025年に入り大きな転換期を迎えています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、多くの企業がクラウドサービスの採用を進めています。市場には大きく分けて2つの選択肢があります。
ローカルクラウドの状況
タイ国内の通信事業者が提供するローカルクラウドは、タイ企業のニーズに特化したサービスを展開しています。主要なプレイヤーは以下の通りです。
・True IDC Cloud
・CAT Cloud
・CS LOXINFO Cloud
・AIS Cloud
・INET Cloud
ローカルクラウドの最大の強みは、タイのビジネス環境に合わせたサービス提供です。具体的には以下の特徴があります。
●サポート面
・タイ語によるテクニカルサポート
・バンコク市内での対面サポート
・タイの商習慣に即した柔軟な対応
●契約・料金面
・タイバーツでの請求
・分かりやすい定額料金プラン
・タイの商慣習に沿った契約形態
●インフラ面
・タイ国内のデータセンター利用
・国内ネットワークとの親和性
・タイの法規制への準拠
グローバルクラウドの展開
世界的な大手クラウドプロバイダーは、タイ市場での存在感を急速に高めています。主要なプレイヤーは以下の通りです。
・Amazon Web Services (AWS)
・Microsoft Azure
・Google Cloud Platform (GCP)
グローバルクラウドは、世界標準の技術力を強みとしています。
●機能面
・最新のクラウド技術の提供
・高度なセキュリティ対策
・世界規模のインフラ基盤
・AIや機械学習などの先端技術
・自動化ツールの充実
●問い合わせ対応
・英語での24時間サポート
・チャットやメールでの対応
・豊富な技術ドキュメント提供
●コスト面
・従量課金制による柔軟な料金体系
・スケールメリットを活かした価格競争力
・自動化による運用コスト削減
市場の最新動向
2025年1月、AWSがタイランドリージョンの運用を開始しました。これにより、タイ国内にAWSのサーバーが設置されることになりました。
この動きは、タイのクラウド市場に大きな影響を与えています。これまでグローバルクラウドの課題とされてきた通信速度の問題が解消されました。また、タイ国内でのデータ保持が可能になったことで、PDPAへの対応も容易になっています。
次のセクションでは、クラウド選択の具体的な判断基準について解説します。
クラウド選択の判断基準
クラウドサービスの選択は、企業の将来に大きな影響を与える重要な決定です。ここでは、タイでビジネスを展開する日系企業が特に注目すべき判断基準を解説します。
コストの比較
ローカルクラウド
・タイバーツでの定額料金が一般的です
・初期費用と月額費用の構造がシンプルです
・為替変動の影響を受けにくい点が特徴です
グローバルクラウド
・従量課金制が基本です
・ドル建ての料金設定です
・使用量に応じた柔軟な支払いが可能です
運用、サポート面での比較
ローカルクラウド
・タイ語での問い合わせがスムーズです
・現地スタッフとの直接対話が可能です
・タイの祝日に合わせたサポート体制です
グローバルクラウド
・英語での対応が基本です
・チャットやメールでの24時間対応です
・豊富な技術ドキュメントが利用できます
技術面での比較
ローカルクラウド
・基本的なクラウド機能を提供します
・タイ国内向けに最適化されています
・機能のアップデートは控えめです
・サーバーの構成変更に時間がかかります
・スペック変更には事前申請が必要です
グローバルクラウド
・最新技術をいち早く導入します
・世界標準の高度な機能を提供します
・自動化ツールが充実しています
・数クリックでサーバーの構成を変更できます
・必要に応じて即座にスペックを変更できます
法令対応での比較
ローカルクラウド
・PDPAへの対応が標準です
・タイの規制に完全準拠しています
・契約書がタイ語で提供されます
グローバルクラウド
・国際標準の認証を取得しています
・タイを含む各国の法令に対応します
・英語の契約書が基本です
なお、2025年1月にタイランドリージョンを開設したAWSの場合、タイ国内にデータを保持できるため、PDPAへの対応はローカルクラウドと同等のレベルとなっています。データの国内保持が必要なシステムでも、AWSを選択肢に含めることが可能です。
日系企業特有の考慮点
日系企業がクラウドを選択する際は、タイ国内の要件だけでなく、日本本社との関係も重要な判断材料となります。多くの企業では、本社の承認プロセスや既存システムとの連携を考慮する必要があります。
また、将来的なグローバル展開の可能性も検討が必要です。アジア地域での事業拡大を計画している場合、各国でのシステム展開のしやすさも重要な判断基準となります。
日本語でのサポート体制も、多くの日系企業にとって重要な要素です。特に技術的な問い合わせや障害対応時には、日本語でのコミュニケーションが求められるケースが多くあります。
次のセクションでは、これらの判断基準を業種別に当てはめ、具体的な選択方法を解説します。
グローバルクラウドとパートナー活用の提案
グローバルクラウドには、これまで説明してきたようにいくつかの課題がありました。しかし、クラウドベンダーのパートナーを活用することで、これらの課題を解決できます。
タイ語サポートの実現
グローバルクラウドの最大の課題の一つが言語の問題でした。しかし、タイ国内のAWSパートナーを利用することで、以下のメリットが得られます:
・タイ語での技術サポート
・一部のパートナーでは日本語対応も可能
・現地での運用支援
・タイの商習慣に応じた柔軟な対応
ただし、パートナーによってサポート品質や追加コストが異なります。パートナー選定は慎重に行う必要があります。
決済面での最適化
タイから海外への送金には税制面での不利があり、グローバルクラウドの場合は海外送金が必要になるという課題がありました。これはパートナーを活用することで以下が解決します。
・タイ国内での決済が可能に
・源泉徴収税の課題を解消
・タイバーツでの支払いにも対応
・現地会計処理の簡素化
パートナー独自のメリット
AWSパートナーによっては、付加価値の高いサービスを提供しています。
・無料のクラウド利用トレーニング
・AWSの直接契約より優遇された料金
・現地でのハンズオンサポート
・タイ特有の規制対応の支援
タイでのAWSパートナー選びについては、「タイ・バンコクでおすすめのAWSパートナー企業を紹介」で詳しく解説しています。このページを参考にパートナーを選定することで、より効果的なクラウド活用が可能になります。
最適な選択肢
以上を踏まえると、タイでのクラウド活用では、この3つを組み合わせることが、最適な選択となります:
1. グローバルクラウドの採用
2. 現地パートナーの活用
3. タイランドリージョンの利用
特に、2025年1月にタイランドリージョンを開設したAWSは、以下の点で優位性があります。
・タイ国内でのデータ保持が可能
・低レイテンシーでの利用
・充実したパートナーネットワーク
・PDPAへの確実な対応
次のセクションでは、これまでの内容を踏まえた総括をします。
まとめ
ここまで、タイでのクラウド選択における重要なポイントと、ローカルクラウドとグローバルクラウドの特徴について解説してきました。
タイでのクラウド活用においては、高い技術力を持つグローバルクラウドの採用と、現地に精通したパートナー企業との協業が、プロジェクトの成功に不可欠です。特に2025年1月のAWSタイランドリージョン開設により、グローバルクラウドの優位性はより一層高まっています。
今回ご紹介した比較ポイントは、以下の観点から検討を行いました。
・コストと料金体系
・運用面でのサポート体制
・技術面での機能比較
・法令対応の状況
・日系企業特有の課題
グローバルクラウドとローカルクラウド、それぞれに特徴がありますが、AWSパートナーをうまく活用することで、グローバルクラウドの課題を解決できることが分かりました。
ご自身の企業の要件や、将来の事業展開を見据えて、最適なクラウドとパートナーの組み合わせをお選びください。この記事が、タイでのクラウド活用における意思決定の一助となれば幸いです。